創業計画を作るとき、意外と難しいのが売上計画です。
まだ事業を始めていないため、過去の売上実績はありません。それでも創業計画には、月ごとの売上や、その根拠を書く必要があります。
「月商100万円を目指します」と書くことはできますが、次のように聞かれると説明に困ってしまいます。
なぜ、月商100万円になるのでしょうか?
そこで今回は、地域のデータを確認できる「RESAS」を使い、昔から使われてきた「千三つ」という考え方を組み合わせて、売上を試算してみました。
RESASで商圏の数字を確認する
RESAS(リーサス)は、地域の人口、産業、人の流れなどのデータを、地図やグラフで確認できるシステムです。
創業を考えている地域について、たとえば次のような数字を確認できます。
- 地域にどれくらいの人がいるか
- どのような年代の人が多いか
- 周辺にどれくらい事業所があるか
- 人が集まりやすい場所はどこか
もちろん、地域にいる人が全員お客さんになるわけではありません。
そこで、RESASで確認した商圏の数字に「千三つ」という考え方を組み合わせてみます。
昔から商売でいわれる「千三つ」
「千三つ」は、昔から使われてきた言葉です。
もともとは「千のうち三つ」という非常に低い確率を表し、取引がまとまる難しさや、新商品を当てる難しさなどを示す言葉としても使われてきました。
商売の世界では、次のような意味合いで使われることがあります。
1,000人に声をかけて、そのうち3人がお客さんになる。
3人を1,000人で割るので、割合にすると0.3%です。
ただし、「どの商売でも顧客になる割合は0.3%になる」という統計ではありません。あくまで昔から伝わる格言や慣用句のようなもので、今回は売上計画を考えるための仮説として使います。
「千三つ」で顧客数と売上を試算する
たとえば、商圏内に対象となりそうな人が3万人いるとします。
そこから「千三つ」で顧客数を試算すると、次のようになります。
- 商圏の対象者:30,000人
- 想定顧客化率:0.3%
- 想定顧客数:90人
- 客単価:10,000円
30,000人 × 0.3% × 10,000円 = 売上900,000円
「月商90万円」とだけ書くよりも、数字を分解したことで、売上の考え方を説明しやすくなりました。
なお、3万人、顧客化率0.3%、客単価1万円という数字は、考え方を説明するための例です。実際の創業計画では、事業の内容や対象となる顧客に合わせて設定する必要があります。
売上を作れそうなら、商圏としては「当たり」かもしれない
この計算で必要な売上をしっかり作れそうなら、その商圏は事業との相性が比較的よい、いわば「当たりの商圏」かもしれません。
たとえば、目標月商が80万円で、商圏から試算した売上が90万円なら、少なくとも対象者の人数から見て、検討を進められる可能性があります。
ただし、計算上の売上が目標を上回れば、そのまま事業が成功するという話ではありません。
実際の売上は、次のような要因にも左右されます。
- 競合店や競合サービスの数
- 店舗や事務所の立地
- 商品やサービスの認知度
- 価格と客単価
- 一度に対応できる顧客数
- リピート率
商圏に十分な人数がいることは、事業を成立させるための前提条件の一つです。商圏の数字だけで、事業の成否が決まるわけではありません。
売上が作れないなら、集客方法を作り込む
一方、計算してみても必要な売上に届かない場合は、数字を無理やり合わせるのではなく、次の点を考える必要があります。
足りない売上を、どのような方法で埋めるのか。
具体的には、次のような方法が考えられます。
- 商圏を広げて対象者を増やす
- Web広告やSNSで地域外から集客する
- 紹介が生まれる仕組みを作る
- リピート商品や継続契約を用意する
- 客単価を上げられる商品構成にする
- 法人向けなど、別の顧客層を加える
- 出店場所そのものを見直す
たとえば、商圏からは月商60万円しか見込めないのに、計画上は月商100万円が必要なら、残り40万円をどこから作るのかを具体化しなければなりません。
このとき、「SNSを頑張る」「口コミを増やす」だけでは、売上計画としては少し弱いでしょう。
集客方法についても、次のように数字へ落とし込んでみます。
- 月10件の問い合わせを獲得する
- そのうち3件を受注する
- 1件当たりの売上を15万円とする
- 合計45万円の売上を作る
ここまで具体化できれば、開業前に必要な広告費、営業活動、Webサイトの準備なども見えやすくなります。
大切なのは、予測を当てることより分解すること
創業前に売上を正確に予測するのは難しいものです。
だからこそ、最初から完璧な数字を作ろうとするのではなく、次のように分解して考えることが大切です。
対象者数 × 顧客になる割合 × 客単価 = 売上
数字を分解しておけば、開業後に計画と実績を比較できます。
- 対象者へのアプローチが足りなかった
- 問い合わせは来たものの、受注につながらなかった
- 顧客数は少なかったが、客単価は高かった
- 新規客は来たが、リピートにつながらなかった
こうした原因を確認できれば、次にどこを改善すべきかも分かりやすくなります。
RESASは売上を当てる道具ではなく、仮説を作る道具
注意したいのは、RESASで地域の数字を確認しても、それだけで売上が決まるわけではないことです。
人口、滞留人口、事業所数などでは、それぞれ数字の意味が異なります。自分の事業では、誰を売上計算の母数にするのが適切なのかを考える必要があります。
また、「千三つ」も絶対的な基準ではありません。
RESASと千三つを使えば、将来の売上を正確に予言できるわけではなく、次の点を考えるための出発点になります。
- この商圏に十分な見込み客がいるか
- 目標売上を作れる可能性があるか
- 足りない売上を何で補うか
- どのような集客方法を準備するか
まずは自分の地域の数字を見てみませんか?
創業計画の売上は、「これくらい売りたい」という希望だけでなく、できる範囲で根拠を組み立てることが大切です。
商圏の数字だけで必要な売上を作れそうなら、事業との相性がよい地域かもしれません。
反対に、必要な売上へ届きそうにないなら、商圏を広げるのか、Webで集客するのか、客単価やリピート率を高めるのかを、創業前にしっかり作り込む必要があります。
まずは難しく考えすぎず、RESASの公式サイトで、自分の地域についていろいろな数字を見てみませんか?
今まで気づかなかった地域の特徴が、創業計画や集客方法を考えるヒントになるかもしれません。




